2008年6月24日火曜日

汐見島探検ツアー その3

一見して海は、どこを漕いでもどこを進んでも良さそうに見えます。物理的には、どこでも漕いで行ける訳ですが、実際はどこでもという訳にはいきません。フェリーにしても貨物船にしても漁船にしても、だいたい決まったルートを進んでいるのではないでしょうか。いつもよく見かける釣り客を乗せる渡船にしても、いつも決まったコースを行ったり来たりしています。ワタクスはシーカヤックでも同じようなことが言えると思います。フェリーや貨物船よりは遙かに自由が利きますが、そして色んな場所へ上陸できますが、そうかと言って好き勝手にコースを決めてツアーをするのはどうかと思うのであります。

航路横断にしてもしかりです。その日の天気や海の状態、そしてメンバーの技量に合わせて横断ルートが決まって来ます。ある場所は西からの船舶が猛烈に追い抜きをかけてくる場所であったり、また他の場所はターニングポイントであったり、逆走の大型船がやって来る可能性がある場所であったり、航路と激潮部が錯綜する場所であったりと、海は場所によってその特徴が異なります。また同じ航路であっても船舶によっては、基本線よりも外であったり内であったりしますので、その辺の状況判断が非常に重要です。浦富シーカヤック倶楽部会長のカヤックはノーライトデザイン社製:ケブラーチニータです。このカヤックはラダー付きシーカヤック:ツカーラから誕生したグリンランドタイプのカヤックです。ラダーもスケッグもありません。必要ありませんと言った方が良いかも知れません。チニータの特徴は、荒れた海でその威力を発揮します。もちろん全くパドリング技術がない方が、自由自在という訳にはいきませんが、基本的パドリング技術をマスターしている方であれば、パドルの動きに非常に敏感に反応してくれます。デッキを低く抑えてありますので、強い風が吹いてもその影響を受けにくい構造になっています。日本海の荒れた海にも対応できる性能を持った優れもののカヤックです。
未来の袖ヶ浦シーカヤック倶楽部会長のカヤックは、これまたノーライトデザイン社製のシオン-Xです。フルカーボンシーカヤックで重量は僅か14kgです。グリンランドタイプのカヤックですが、初期安定は非常に良く、少し傾けると、一定の角度でピタリと止まります。そして長さは470cmですが、荷物を満載してもスピード性能は全く衰えず、シャープで快適です。更にロールなどの習得にも非常に適したカヤックで、ハンドロールなども非常にやりやすいカヤックです。チニータ同様強風の影響を受けにくく、荒れた海でも安定した漕行性能を持っています。
CSC広島支部長のカヤックは謎のブラックキャットと言うことにしておきましょうか。常に多方面に渡り研究熱心なことは、もう誰もがご存知ですが、今回は新兵器でのディナーを大変ご馳走になりました。シシトウにシャウエッセンに竹輪にその他色々とご馳走になりました。お陰で僕は元気ですって、昔誰かが歌っていましたが、コンパクトカヤックにあれだけの準備はなかなか大変だったと思います。 レンスーに関しては、20mCPC挑戦の時に見ていなかったのが、心残りですが、是非また五兆千下さい。背泳CPCも見たいものです。
辺りは少しガスってはいますが、ベタ凪ぎ状態の瀬戸内海です。朝食を早く食べたせいか、お腹が空き空きになり、フロントハッチ内から食料を取り出している香川支部長。帰りの支部長のパドルは僅か2mのツイギィパドルでした。ブレードはノーマルでいわゆるストーム系のパドルです。これはレンスー用でもありますが、予備パドルにもなります。通常パドルだとスピードを出し過ぎるので、この予備パドルで、戻って来ました。それでも他の皆さんよりはまだ速いのですから何というパワーなのでしょうか!
汐見島ツアーは毎年実施しておりますが、今年もまた新鮮な内容でした。いつものメンバーもいれば新しいメンバーもいます。そしてフェリーも使わなければ、港湾からの出艇も絶対にしません。小さな海水浴場から出航して、小さな浜へ向かいます。その浜には、何もありません。お店もなければ、宿もありません。そこへ行くために、あるいはまた別の島へ行くために、常に我々はレンスーを心がけています。セルフレスキューができない人は、参加できません。ちょっと風や波があるとフラフラする人は、絶対に無理です。しっかりレンスーして技術を磨き、もちろんそれがすべてでは無いことは、メンバーの誰もが知っていますが、コツコツと技術や経験の積み上げを意識している人達と行く場所は、実はどこでも楽しいと思うのです。今回もまた非情に有意義な2日間でした。 ワタクスも昔は非常に長いカヤックや大きなカヤックに乗っていました。それは実は何も知らなかったからです。大きなカヤックだといっぱい荷物が積めますし、長いカヤックだと一般的にスピードが速いし、それがまた格好良いとも思っていました。それはまだノーライトデザイン社のカヤックに出会う前のことでした。しかしノーライトデザイン社のチニータに出会ってからは、カヤックに対する考えがガラリと変わりました。それまでにも小ぶりなカヤックは持っていましたが、とにかく自分には全くサイズが適合していませんでした。帯に短し襷に長しと言った感じで、しっくり来るカヤックは、ありませんでした。
昼頃の撮影でしたが、少し空が晴れて明るくなりました。上記写真のカヤックはラサMSですが、これが今もっともCSCにおいて普及しているカヤックでサイズです。このサイズですと、かなり小柄な方から大柄な方まで対応できます。長さは僅か485cmで幅は57cmです。しかしカヤックのボリュームはとても小さく抑えられていて、重量もケブラーで17kgです。ケブラーと言えばカレントデザイン社などのケブラーのように樹脂をべた塗りして結果として、FRP製のカヤックと何ら変わらない重いカヤックを想像される方が多いと思いますが、ノーライトデザイン社の特殊加工で非常に軽く仕上がっています。そしてケブラー特有の超まろやかな動きを味わうことができます。
我々は予定よりも島を早く出発して、昼過ぎにはいつもの極楽島に戻って来て、昼食後にはまた荷物を降ろして、レンスーを楽しました。ワタスは身体と心に支障を来しており、またしても熟睡しておりましたが、時折香川支部長の大きな声が聞こえていました。昨夏ロングロールを覚えたばかりの茨木さんのハンドロール初上がりの歓声だったのです。また皆さんそれぞれがそれぞれの課題にアプローチをして、新たな課題を見つけられたことと思います。

今回のツアー中に考えていたことは、カヤッキングはどうあるべきかを考えず、お金儲けを優先して考えると、将来は規制ばかりがかけられて、カヤックではもうどこにも行けなくなる可能性は充分にあるということ。カヤッキングに最低限必要な技術と経験とは・・・?カヤックツアーはどうあるべきか?カヤックスクールは何をどのように教えるべきか?カヤックガイドはツアー催行の以前にアウトドア活動がどうあるべきか?をプロの業者はもっともっと真剣に考えて頂きたいということ。安易なシーカヤックツアーがもたらす結果は、公園の遊園地の池以外は乗れないと状況を作りだしてしまう可能性があるということを、一度真剣に考えてみて頂きたいと思うのであります。